ナルコレプシーとは
昼間の激しい眠気が出現する睡眠障害である。情動脱力発作(カタプレキシー)が出現する患者もいる。睡眠時のパターンが通常と異なり、睡眠が浅く悪夢を伴うことが多い。現在では、睡眠にかかわるオレキシンに対する自己免疫疾患であるとの説が有力である。
ナルコレプシーの命名者
1880年に「Narco=眠り」「Lepsie=発作」からランスの医師ジャン=バティスト=エドゥアール・ジェリノー (Jean-Baptiste-Édouard Gélineau) が命名した。この病気を発見した人は、イギリス人医師トーマス・ウィリス (Thomas Willis)である。
ナルコレプシーの分類
①情動脱力発作を伴うナルコレプシー(オレキシン減少を伴う)
②情動脱力発作を伴わないナルコレプシー
③身体疾患によるナルコレプシー(オレキシン減少を伴う)
④特定不能のナルコレプシー
ナルコレプシーの睡眠
ナルコレプシーの特徴として、入眠時レム睡眠が特徴である。この時に、金縛りや厳格や幻聴などの症状を起こしやすい。通常、入眠時には、ノンレム睡眠期を経てレム睡眠に入る。その後も、レム睡眠とノンレム睡眠の間で、中途覚醒を起こす。このとき、起きているのに体が動かないため、金縛りが起こる。結果として、睡眠が浅くなり、悪夢を見る確立が高い。悪夢が、夢の中の出来事か、現実に起こったのかわからなくなる人もいる。
情動脱力発作(カタプレキシー)とは
感情が昂ぶった時(笑い・喜び・自尊心を傷つけれるなど)、突然、脱力する。全身発作の場合、全身の脱力により、転倒する場合もある。部分発作の場合、膝の脱力やろれつが回らなくなる等、部分的な筋肉の一時的な低下が起こる。
ナルコレプシーの年齢
15歳ごろの発生が多いとされ40歳以降では起こりにくい。
ただし、現在では、診断が付くまでに平均15年かかっている現実もある。
ナルコレプシーの頻度
日本人の0.16%は、ナルコレプシーと考えられており、診断が付いていない患者が多いと見積もられている。世界的には、0.05%と見積もられており、日本人に多いとされる。これは、ナルコレプシー患者のほぼすべてにHLA-DR2が陽性であること、また、日本人には、それに加えて、ほぼすべてにHLA-DQ1も陽性であることがわかっており、日本人でナルコレプシーが多い原因ではないかと推測されている。
ナルコレプシーの原因
オレキシンが欠乏するとナルコレプシーになると証明されている。オレキシンは、視床下部粗分泌される神経伝達物質で、オレキシン遺伝子のノックアウトマウスでは、ナルコレプシー症状が出るとことがわかっている。また、オレキシン神経細胞を破壊したナルコレプシーモデルラットに、オレキシン投与やオレキシン遺伝子の投与で症状が改善する。人のナルコレプシー患者でも、オレキシン神経細胞が欠落している人も見つかっている。睡眠にかかわるオレキシンに対する自己免疫疾患であるとの説が有力である。
オレキシンとは
オレキシンは、睡眠と覚醒の調整に重要な役割を果たしていると考えられている。現在、興奮して寝付けない人に対して、オレキシンを調整する新しいタイプの睡眠薬が開発され、患者さんへの治療が始まった。平成26年11月26日から健康保険で治療が受けられる。
ナルコレプシー患者のオレキシン濃度
情動脱力発作を伴うナルコレプシーと身体疾患によるナルコレプシーでは、オレキシン減少が補助診断に用いられている。具体的には、脳精髄液中のオレキシン1濃度を測り、正常値の3分の1である、110pg/mlであれば、ナルコレプシーの可能性が高い。情動脱力発作を伴なわないナルコレプシーの患者さんでは、オレキシンの減少ははっきりしていない。
ナルコレプシーの治療法
睡眠障害の人は、とにかく寝ることが重要。その上で、適切な薬を選択する。
ナルコレプシーと考えられる有名人
色川武大(作家)
(文責:著作権:上本町わたなべクリニック渡邊章範)