脳梗塞とは
脳梗塞は、脳の血管が詰まる事で引き起こされる脳の障害をいいます。
脳梗塞は、大きく①心原性脳梗塞②アテローム性脳梗塞③ラクナ梗塞に分類されます。割合は、ほぼ3分の一づつです。
①心原性脳梗塞・・・不整脈で心臓から血栓がぽんと飛んで脳の血管が詰まる。広範囲に及ぶ事が多いため、予防には心臓の管理が必要です。
②アテローム性脳梗塞・・・頚動脈や脳動脈などの血管の内部にコレステロールや血球成分、炎症成分などで出来た動脈硬化が詰まったり、その成分が飛んで下流の動脈を詰まらせる事によります。
③ラクナ梗塞・・・脳の比較的小さい動脈内で血管が詰まることによります。高血圧が原因とされています。微小脳梗塞ともいわれています。
脳梗塞予防
①水分 ②高血圧 ③コレステロール ④不整脈
発症年齢
50代から起こりやすいとされています。年齢とともに急増します。まれに30代や40代で起こる事もあります。
男女差
脳梗塞の頻度は、男性は女性の1.5倍ぐらい多いとされています。男性では、68歳ぐらいに多く、女性には、73歳ぐらいが多いと言われています。これは、女性ホルモンが、脳梗塞の原因の動脈硬化を抑制するためといわれています。
患者数
厚生労働省の平成22年の1年間の調査では、1年間の死亡者数は、7万2885人と脳血管疾患の全体の60%でした。ちなみに前死亡数に占める脳血管疾患の割合は12万3461人と10.3%でした。
脳血管障害で通院している人は、およそ10万人。入院している人は、およそ20万人です。
起こりやすい時間
①心原性脳梗塞・・・不整脈を起こしやすいとき。
例えば、仕事中とか運動中
②アテローム性脳梗塞、③ラクナ梗塞・・・早朝や起床前
起こりやすい季節
1年を通じて起こりますが、夏に増加します。脱水が原因と考えられています。
前駆症状と一過性脳虚血発作(TIA)
TIA(一過性脳虚血発作)と呼ばれるものが、三分の一の患者に前兆が見られるといわれています。小さな血栓が脳の血管に一時的につまり、それが自然と解けることで起こります。24時間以内に消えるものを指しますが、通常は、10分程度です。
一過性脳虚血発作(TIA)
主な症状としては、
①手足に力が入らない
②足がもつれる
③片方の手足がしびれる
④物が2つに見えるなどの視力障害
⑤とっさに言葉が出てこなかったり,ろれつが回らなくなる。
⑥物を飲み込めない
などが有名です。
TIAを放置すると30%は、脳梗塞を起こすといわれています。
脳梗塞の症状
アメリカ脳卒中協会では、頭文字をとって「FAST」と読んでいます。
Face(顔)・・・笑ってみてもらうと、片方の顔が下がる。
Arms(腕)・・・腕を上げたときに片方の腕が下がってくる。
Speech(会話)・・・ろれつが回らない。
Time(時間)・・・異常の一つでも当てはまればすぐに救急車を。
脳梗塞で助かるために
後遺症を起こさないために
脳梗塞発症後できるだけすぐに治療を開始する事が大切です。
出来れば2時間以内、遅くとも6時間以内の治療開始が望ましいです。
予防
脳梗塞は、高血圧・糖尿病・コレステロール・心臓病がある方に多いため、まずしっかりと直す事が必要です。
①心原性脳梗塞
不整脈をきちんと管理する必要があります。定期検査と投薬が中心となります。
②アテローム性脳梗塞
コレステロールのコントロール、頚動脈エコーなどでの定期検査が必要です。
③ラクナ梗塞
高血圧の管理・治療が一番です。脳梗塞を起こした後の有症候性のラクナ梗塞には、プレタールを使う事があります。
生活習慣
タバコ・肥満・運動不足・ストレス・加齢・多量飲酒などを改めてみましょう。
高血圧と脳卒中
脳卒中には、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血が主なものです。それぞれおよそ60%・30%・10%です。特に脳出血は血圧が主要な原因とされています。脳梗塞・くも膜下出血も一番の原因は、高血圧といわれています。
⇒高血圧専門外来
コレステロールと脳卒中
脳梗塞ではなく脳卒中全体の話になりますが、さまざまな研究のなかで、Amarenco氏らが2009年のLancet Neurol.に掲載した、スタチン治療と脳卒中発症のメタ解析がエビデンスレベルが高いものです。海外データですが、16万5792例の報告です。LDL-cho10%低下ごとに7.5%の相対リスクが現状するとされています。
コレステロールとアテローム性脳梗塞
アテローム性脳梗塞とLDL-choの関係については、2000年imamura氏らによって発表された久山研究があります。LDL-cho149までと比べ150以上ではおよそ2~3倍なりやすいという結果が出ています。
糖尿病と脳卒中
糖尿病が、アテローム性脳梗塞の原因である、動脈硬化の原因となること、また、糖尿病により体中の微小血管を傷害するのと同じメカニズムで、脳の微小血管も傷害するため、ラクナ梗塞の原因となります。
隠れ脳梗塞とは
症状が無い人が、たまたまMRIなどの検査を受けたときに脳梗塞が見つかることをいいます。無症候性脳梗塞ともいいます。ただ、隠れ脳梗塞が見つかった場合、普通の人の4倍脳梗塞を起こしやすいといわれています。血圧のコントロールが一番重要です。心臓・コレステロール・糖尿病の検査も行い自分のリスクを知る事も必要です。
隠れ脳梗塞の画像診断
MRIのT2強調画像で高信号、かつ同部位がT1強調画像で3mm以上の低信号域を占めるものをいいます。また、久山研究によれば無症候性脳梗塞のおよそ85%がラクナ梗塞のため、隠れ脳梗塞=無症候性脳梗塞=ラクナ梗塞が大体当てはまる。
隠れ脳梗塞の予防・治療
大事なので何度も言いますが、隠れ脳梗塞に限らず脳梗塞の予防・治療は血圧の管理が一番です。