黄砂やPM2.5が来た当日から2日後に、脳梗塞になりやすい。
中国の大気汚染物質PM2.5の日本への被害が注目されているが、日本に一番多くの黄砂が飛んでくる4月は、黄砂やPM2.5に特に注意が必要である。
過去30年のデータによれば、黄砂は、例年10月から翌年の6月まで続くが、ほとんどが、3月から5月に飛来する。4月がピークとなる。
中国の大気汚染物質が黄砂に付着して、PM2.5など微粒子となって飛来してくる。吸い込むと、呼吸器症状や肺がんなどの原因になっていると事はよく知られており、心疾患にもなりやすいことがわかっていた。
さらに、コレステロールや中性脂肪などによるいわゆるどろどろな血液になっているタイプの脳梗塞予備軍の人が、黄砂やPM2.5を多い日の当日から2日後にかけて脳梗塞にて救急搬送される患者数が30%増えると言う衝撃の疫学データが、発表された。
データによれば、アテローム性動脈硬化の方の脳梗塞発症による救急搬送が、黄砂が飛ぶ当日から2日後に多く5日後まで増えている。
これまでの研究では、大気汚染により、肺疾患や心臓病になることはよく知られていた。これは、35年ほど前に大気汚染に悩んだアメリカなどで研究が進んだからだ。最近のアメリカの研究では、大気汚染の影響により、頸動脈のIMTが、1.7μmm/年増大するという疫学発表もある。
黄砂による脳梗塞になるメカニズムは解明されていないが、
①急に脳梗塞になる即時型
②だんだんと脳梗塞になりやすくなる長期型
に分類できると考えられる。
メカニズムの仮説としては、
①黄砂やPM2.5などが直接脳の血管に詰まる直接仮説
②肺胞に入った黄砂やPM2.5などが血管の炎症を引き起こし、酸化ストレスや凝固反応や内皮機能の低下が、全身の血管に伝わる炎症説
③有害物質であるPM2.5が血液に溶け出して、体に悪影響を引き起こす化学反応説
が考えられる。
また、直接血液内に入った微粒子の大きさなどにより、免疫細胞が認識するものとされないものがあると考えられる。
認識されると、微粒子が免疫細胞などで取り込まれて、炎症反応が起こる④複合説などが理解しやすいのかもしれない。微粒子が小さすぎたり、免疫細胞から逃れられれば、血管内を漂り、血管壁などに付着すると考えられる。
(分類:①即時型②長期型 メカニズム:①直接仮説②炎症説③化学反応説④複合説 いずれも渡邊医師の仮説)
(文責・著作:上本町わたなべクリニク渡邊章範)
中国の大気汚染によるP.M.2.5の日本人への健康被害について
平成25年2月6日ミヤネ屋生放送中での渡邊院長からのコメント
①P.M.2.5は、短期には、せきや肺炎の引き金になる。長期には、喘息や肺がんの原因となる。
②WHOによれば、大気汚染によって、主に5歳以下の肺炎などにより年間100万人以上の人の命が失われているという事実がある。
③大気汚染により葉が枯れ、農作物の収量が減る。
④P.M.2.5には、SOX(硫黄酸化物)やNOX(窒素酸化物)といった発ガン物質が含まれることがある。
⑤P.M.2.5は、花粉に引っ付くことで、アレルギー症状の悪化の原因となりうる。
⑥P.M.2.5は、花粉の10分の1の小ささのため、家に帰るときは、はたいただけでは落ちない可能性も。
⑦洗濯物は、外ではなく部屋干しも考慮に。
⑧雨の日は、P.M.2.5が地面に落ちても、翌日乾燥すると再び舞い上がる可能性もある。
「番組の流れ」
中国の大気汚染は深刻な状況になっている。天安門広場はかすんで前が見えず、政治家の肖像画もぼんやりとしか見えない状態。中国環境保護省によると130万平方kmが汚染されている。1月29日の北京ではアメリカの大気汚染基準レベル6段階中最も深刻なレベルになっていたことがわかった。予測では2月10日あたりに日本方面へ汚染物質が流れてくる。
中国で問題になっている大気汚染物質「PM2.5」とは、直径2.5マイクロメートル以下の粒子状物質。花粉の時期になるとPM2.5は花粉に付着して体内に入ってしまう可能性がある。人体への影響はぜんそく・肺がん・心臓疾患などの原因になる。
PM2.5の日本の基準値はマイクログラムに対し、1月13日に大阪・枚方市で63.7マイクログラムを観測、1月31日に福岡市では52.6マイクログラムを観測した。日本政府の見解は、「現時点で直ちに影響があるというレベルではない」と加藤官房副長官は1月31日の会見で述べている。
北京市の対策は、1月29日に「汚染防止緊急対策」を発動した。汚染物質を出す103の企業を操業停止し、ホコリが立つ建設用地の操業停止、石炭を使う火力発電所に汚染物質の低減を指示、公用車の3割使用停止などを決めた。今後の追加対策として、大気汚染防止条例を7月に審議入りさせ年内採決を目指す。
厚生労働省からの情報(H25年2月現在)
1.微小粒子状物質(PM2.5)とは
大気中に漂う粒径2.5μm(1μm=0.001mm)以下の小さな粒子のことで、従来から環境基準を定めて対策を進めてきた粒径10μm以下の粒子である浮遊粒子状物質(SPM)よりも小さな粒子です。
PM2.5は粒径が非常に小さいため(髪の毛の太さの1/30程度)、肺の奥深くまで入りやすく、肺がん、呼吸系への影響に加え、循環器系への影響が懸念されています。
粒子状物質には、物の燃焼などによって直接排出されるものと、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)等のガス状大気汚染物質が、主として環境大気中での化学反応により粒子化したものとがあります。発生源としては、ボイラー、焼却炉などのばい煙を発生する施設、コークス炉、鉱物の堆積場等の粉じんを発生する施設、自動車、船舶、航空機等、人為起源のもの、さらには、土壌、海洋、火山等の自然起源のものもあります。
これまで取り組んできた大気汚染防止法に基づく工場・事業場等のばい煙発生施設の規制や自動車排出ガス規制などにより、SPMとPM2.5の年間の平均的な濃度は減少傾向にあります。
2.環境基準について
環境基本法第16条第1項に基づく人の健康の適切な保護を図るために維持されることが望ましい水準として以下のとおり環境基準を定めています。1年平均値 15μg/m3以下 かつ 1日平均値 35μg/m3以下
(平成21年9月設定)
この環境基準値は、呼吸器疾患、循環器疾患及び肺がんに関する様々な国内外の疫学知見を基に、専門委員会において検討したものです。
3.現在の状況
現在、大気汚染防止法に基づき、地方公共団体によって全国500カ所以上でPM2.5の常時監視が実施されています。
PM2.5を始めとする大気汚染物質濃度の現在の状況については、環境省(大気汚染物質広域監視システム【そらまめ君】)や多くの都道府県等によって速報値が公表されています。
常時監視結果については、地方公共団体のデータ確定作業を経た上で、測定された翌年度に一括して国へ報告されています。